短形管路における騒音伝播を可視化

ビル等に導入される空調設備では,矩形断面の管路が広く用いられています.この場合、管路上流の送風機や管路内部で発生した騒音が,管路を伝播して居室まで響き,騒音問題を引き起こすことがあります.今回は,上流の送風機による騒音を対象に,管路内部を音波が伝播する状況を音響解析により予測・可視化します.

目次

解析手法と計算条件

音の距離減衰

面音源から発する管路内(径一定)の平面波では,管路径より波長が長い場合,音響エネルギーの距離減衰がほとんど発生せず、離れた場所に音を伝えるために活用されます(伝声管など).騒音についても同様で,管路幅より長い波長の場合、管路出口まで伝播することが危惧されます.

騒音の周波数特性

空調用送風機から発生する騒音の周波数は,500 [Hz]前後の周波数帯で80 [dB]前後の音圧レベルのピークを有することが知られています.音が共鳴すると,音源よりも大きな音圧レベルになる可能性があるため,計算条件には,音源の周波数に共鳴を考慮する必要があります.

音響解析手法(FDTD法)

管路内部の音圧場の予測にあたり,音響波動方程式に基づいた音響解析手法のうち,3次元空間を対象とした時間領域差分法 : Finite Difference Time Domain (FDTD) 法を採用します.

音響解析手法
□ 時間領域差分法 : Finite Difference Time Domain (FDTD)
□ 限定要素法 : Finite Element Method (FEM)
□ 境界要素法 : Boundary Element Method (BEM)

短径管路とガイドベーン


矩形管路とガイドベーンの寸法(中央断面表示),および音圧の時系列データの測定点は,右図のとおりです.なお,矩形管路の断面は1 [m]四方の正方形です.

左下図のように,2枚羽のガイドベーンをエルボー部に導入することで効果的に圧力損失が低減できます.
詳細は、こちらで解説しています

計算格子

計算格子は,一辺Δx = 2[cm]の立方体格子を用います.最も波長が短いCase5a/Case5bの波長は50 [cm]程度なので,単一波長を25格子程度に分割する格子幅です.

計算結果

ガイドベーンなし

管路径よりも波長が長い125/170 [Hz](Case1a/Case2a)では,管路出口での音圧レベルの減衰はほとんど確認できませんでした.
また,波長が短い340/500/680 [Hz](Case3a/Case4a/Case5a)では,管路出口において音圧の局所分布が見られたものの,音圧レベルの減衰は確認できませんでした.

Case3a~Case5aでの局所分布は,エルボー部での音波の複雑な反射により、平面波が崩壊したためと考えられます.また,音圧レベルの減衰が認められなかったことから,音圧の時空間変動に対し,時間刻みと格子幅が妥当だったと言えます. 今回の管路長では,音圧レベルの減衰は認められませんでしたが,理論的には,伝播方向が乱雑になることで,音響エネルギー(音圧)の散逸が想定されます.

ガイドベーンあり

125, 170, 340 [Hz]の音源(Case1b ~Case3b)では,5 [dB]ほどの音圧レベルの減衰が期待できそうです.また500/680 [Hz]の音源(Case4b/Case5b)では,ベーンがない場合と同様,局所的な空間分布が発生するものの,全体的な音圧レベルの減衰はあまり見られませんでした.

これは,低周波音がガイドベーンによって上流側に反射されるためと考えます.一方,高周波音は複雑に反射しながら,ガイドベーンの間をすり抜けていき,管路径より長い波長の音波に対しては,ガイドベーンにより音圧レベルの減衰効果が期待されます.

おまけ : 周波数 2 [kHz]での音圧レベルの空間分布(ガイドベーンあり)

右図は,音源の周波数2 [kHz],一辺が1 [cm]の計算格子での音圧レベルの空間分布です(Case6b).管路内では至る所で反射が発生している様子が確認できますが,それによる顕著な音圧レベルの減衰は見られません.

詳細はこちら

可視化についての詳細は,右のPDFファイルでご確認ください.

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