3D鼻モデル内の気流をシミュレーション(https://icfd.co.jp/archives/2977)した際の課題のひとつに、計算時間の効率化(短縮)が挙げられた.これを実現する方法のひとつとして考えられる鼻腔内3Dモデル化の精度向上に向け、画像処理と機械学習によるモデル化技術を検討した.
■ この内容は、生体医工学シンポジウム2024での発表を基にしている.
鼻副鼻腔を3Dモデル化
鼻副鼻腔の3Dモデル作成時には、CBCT(Cone Beam Computed Tomography)を用いてDICOMデータを獲得する.正確なシミュレーションには、データから、鼻腔構造の連結・非連結の正確な判定が必須である.
課題 : 鼻腔空間構造の連結・非連結判定の困難さ
CBCTは低線量ゆえに、ノイズが大きくなると言われており、一定の画素値を閾値として腔領域・人体領域を判別すると、鼻腔空間構造の連結・非連結判定を誤ってしまう可能性がある.そこで、画像処理と機械学習により、判定技術の高度化を図り、その限界の調査を目的とした.
手法 : 画像処理と機械学習によるモデル化技術
今回は、モデル化性能確保のため、畳み込みによる特徴量抽出と回帰分析というシンプルな構成を検討した.
特徴量抽出では、カーネルによる畳み込みを採用した.カーネルは成分分析手法により得たものを用いた.
特徴量を基にし、画像2値化のための局所閾値を得る推定を器得るために、回帰分析を用いた.
カーネル群生成
カーネル群生成については、下の図のとおり、Singular Value Decomposition などの成分分解手法を用いて各部位の特徴を表現するカーネルを得、これらを特徴量抽出に用いた.
性能評価・まとめ
処理結果は以下のとおり.
それぞれ左から元データ,単一閾値処理結果,提案手法処理結果である.
改善した箇所がある一方,変わっていない部分も多い.今後,パラメータ調整・データ量増加・手法比較による定量評価・技術選定が必要である.
参考文献
Asama ENT Clinic (https://nose-surgery.jp/)
Y. Asama, A. Furutani, M. Fujioka, H. Ozawa, S. Takei, S. Shibata and K. Ogawa, “Analysis of conductive olfactory dysfunction using computational fluid dynamics”, PLoS ONE 17(1): e0262579, (2022).
Asama-ENT-Clinic においワールドコラム (https://nioi.world/column)
Bethancourt L. Angel M., 浅間洋二, 村田郁子, “鼻腔内流れの数値シミュレーション”, 第36回数値流体力学シンポジウム, E10-3, (2022).
Bethancourt L. Angel M., 浅間洋二, 村田郁子, 藤岡正人, “鼻腔内流れの数値シミュレーション”, 生体医工学シンポジウム2023, E-25, (2023).
青木尚登, Bethancourt L. Angel M., 村田郁子, 藤岡正人, 浅間洋二, “機械学習と画像処理による鼻腔内3Dモデル化”, 生体医工学シンポジウム2024, H-05, (2024).