ウォーターカーテンによるアンモニア濃度の低減

2025年5月1日2025年12月20日

アンモニア漏洩事故の減災策として、ウォーターカーテンによるガス濃度の低減措置が講じられる．今回はDandrieuxらによる実験(参考文献1)をシミュレーションで再現し、比較することで妥当性を評価した．

実験内容

Dandrieuxらによる実験の内容(参考文献1)を抜粋して以下に示す．

クジャクの尾型(peacock tail)の散水機から、上方に放水して水膜を扇状に拡げることで、ウォーターカーテンを形成する．放水点はアンモニア放出源から5m離れた位置とし、平均放水量は730l/min である．

Trial2 : アンモニア放出のみ（放水なし）
Trial5 : アンモニア放出の30秒後から放水を開始

スクロールできます

	Trial2	Trial5
Release rate (kg/min)	14.6	13.5
V(m/s)	3	2.8
Relative humidity (%)	50	50
Temperature (℃)	16	17
Source-curtain distance	–	6m

シミュレーション

計算条件

■ 計算領域

長さ60m 幅60m 高さ15m
格子数: 256x256x64
不等間隔直交格子
最小格子幅 : 5cm

■ 風速

(3, 0, 0) m/s

■ アンモニア放出

開始時刻 (s): 30
放出量: 14.6 kg/min
濃度: 放出源濃度を1とする
放出: 断続的
位置: 計算領域始点から5m

■ 放水

開始時刻 (s): 60
終了時刻 (s): 180
液滴直径 (m): 0.001
放水速度 (m/s): 30
位置 : アンモニア放出源から5m

結果

Trial2(放水なし)とTrial5(放水あり)のシミュレーション動画は以下のとおりである．放水によって、ガス拡散が促進され、アンモニア濃度が低減される様子が確認できる．

Trial2

Trial5

考察

次の表は、アンモニア濃度について実験とシミュレーションの結果を比較したものである．

		10m	20m	30m
実験 (参考文献1)	Trial2 (Cf)	2.615	1.091	0.034
	Trial5 (Cc)	0.299	0.172	0.008
	DR (Cf/Cc)	8.7	6.3	4.3
シミュレーション	Trial2 (Cf)	2.688	0.852	0.472
	Trial5 (Cc)	0.350	0.254	0.215
	DR (Cf/Cc)	7.7	3.4	2.2

散水によるアンモニアの抑制効果を\(Es \) : Effectiveness of spray curtain として次式で定義する．

\[ Es= \frac{Cf-Cc}{Cf} \times 100 \]

上記表のTrial5に基づき計算した\(Es \)について、実験とシミュレーションの比較を右のグラフに示す．

発生源から離れるにつれて実験値と計算値の差が拡がるものの、10m地点では良い一致を示している．屋外実験であることを考慮すれば、シミュレーション結果は妥当であると評価できる．

参考文献

1. Aurelia Dandrieux, Gilles Dusserre, James Olivier, Henri Fournet, Effectiveness of water curtains to protect firemen in case of an accidental release of ammonia: comparison of the effectiveness for two different release rates of ammonia, Journal of Loss Prevention in the Process Industries, vol. 14, pp.349-355, 2001

2. Chao Cheng, Wei Tan, Liyan Liu, Numerical simulation of water curtain application for ammonia release dispersion, Journal of Loss Prevention in the Process Industries, vol. 30, pp.105-112, 2014.