ガイドベーンによる管内流れの圧損低減

ビル等の空調設備には矩形管路が広く用いられています.管内流れでは圧力損失 (圧損) が問題となりますが,中でも,管路が曲がるエルボー部は圧損増大の大きな要因となります.今回は,エルボー部とガイドベーンを伴う矩形管路の管内流れの流体解析を行い,エルボー部での圧損増大およびガイドベーンによる圧損低減のメカニズムを見ていきます.

目次

計算条件

計算領域と境界条件を図1に示します.エルボー部の曲率半径は内周が 20 [cm],外周が 120 [cm] です.また,ガイドベーンの曲率半径は,1番目が 70 [cm],2番目は 45 [cm] です.今回は,(a) ガイドベーンを取り付けない,(b) 1番目のみ取り付ける,(c) 1番目と2番目の両方を取り付ける,の3条件を取り扱います.流入面はエルボー部から 100 [cm],流出面はエルボー部から 400 [cm] の位置とし,流入面での境界条件は流速一定 (u = 0 [m/s],w = 1 [m/s]),流出面の境界条件は圧力一定 (p = 0 [Pa]) とします.なお,矩形管路の断面は正方形で,一辺が 1 [m]です.

図1 計算領域と境界条件

計算結果

圧力分布

図2に矩形管路の中央断面での圧力分布 (時間平均) を示します.図2(a)では,エルボー部の外周側で p = 0.9 [Pa] の高圧領域,内周側の下流ではp = -0.7 [Pa] の低圧領域が生じており,エルボー部前後の圧力差を生み出す要因となっています.図中では,流出面での圧力を基準圧として p = 0 [Pa] に固定しているため,圧損が生じると,流入面での圧力が上昇します.ガイドベーンを取り付けない場合は,図2(a)に示すように,圧損は Δp = 0.7 [Pa] です.ガイドベーンを取り付けた場合は,図2(b)に示すように,圧損が Δp = 0.4 [Pa] に低減されます.そして,ガイドベーンを二つ取り付けた場合は,図2(c)に示すように,圧損が Δp = 0.3 [Pa] にまで低減されます.従って,今回の条件では,ガイドベーンを取り付けることで圧損が半減しました.

図2 時間平均圧力分布(中央断面)

流速分布

エルボー部での圧損増大とガイドベーンによる圧損低減のメカニズムを知るために流速分布を見てみましょう.図3に矩形管路の中央断面での流速分布 (時間平均) を示します.ガイドベーンを取り付けない場合,図3(a)のエルボー部では,流れが内周に沿って曲がり切れず,流れが管路壁面から剥離しています.そして,剥離した流れに囲まれた領域 (死水領域) では、流体がほとんど静止しています.死水領域によって,管路が部分的に塞がれた状態になるため,圧損が増大します.図3(b)ならびに(c)に示すように,ガイドベーンを取り付けることで,流れの剥離が抑制され,死水領域が小さくなります.その結果,死水領域による管路の閉塞が改善され,圧損が低減されます.

図3 時間平均流速分布(中央断面)

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