液化ガスタンク内の流れ場を可視化した.本タンク内で流れを生み出す主要因には、以下の2つがある:
- 浸漬したポンプの吸入による流れ
- ポンプの電動モーターから排出される、モーター冷却に使用された液およびガスによる流れ
仕様・条件
流体解析ソフトウェア : Nagare を用い、以下の仮定に基づいて計算した.
計算条件
- グリッドサイズ : 448×320×256
- 格子サイズ : ポンプ近傍 10mm / 以降不等ピッチ
- 粘性 : 0.0001 Pa-s
- タンク内温度 : 等温
- 計算時間刻み : 5ミリ秒
- 可視化 : ParaView
境界条件
タンク底部に設置されたサブマージポンプのイメージと、その稼働条件は、下図の通り.
モーター吐出し口からは、ポンプ吸込みスピード(2.0 m3/h)の数%の初速をもったガス(気泡)および液体が噴出するとする.
また、気泡のモデルは、非変形体の球形とした.
結果 : 流れ場の特徴
吐出されるガス(気泡)と液体に浮力があると、浮力によって両者とも上昇する.気泡は液面まで上昇して消滅するとする.液体はそのまま液面・タンクの壁面を伝って下降していく.
以上より、浮力が非常に強い力であることがわかる.
まず、ポンプとサンプ周辺の流れ場に着目し、流れ場を流線で表現した.流線とは、時間と共に変化している流れ場で、ある瞬間の速度でひとつの粒子が動いた軌跡をつないだ線のことであり、流体粒子の実際の軌跡(流路線)とは異なる.
速さによって色分けされた流線より、タンク内ではゆっくりとした対流が確認できる.
次に、タンク全体の流れ場を流線で表す.
タンク内部を立体視すると、大きく4通りの流れが見られる.
タンク壁面を伝って下降する液体(下図”タンク内部の4通りの流れ” 3と4の矢印)は、タンク底面に到達すると.吐出し口からの浮力に引っ張られて再び上昇するもの(下図 1の矢印の流れ)と、ポンプのサクションに引き寄せられてサンプ内部へさらに下降していくものとに分かれる.また一部には、液面からの下降途中で上昇中の流れに引っ張られ、底面まで下降せずに上昇していくものも見られた(下図 2の矢印).
- モーター吐出し口より、浮力により直線的に液面に向かうもの(1)
- 液面に達した後、下降途中で浮力の影響で再び上昇に転じるもの(2)
- (2)の再循環の領域から離れると、移動速度がゆっくりになり、タンク壁面に沿って移動し、下降する(3)(4)
- (3)(4)で底面に戻った流れのうち、一部がポンプの吸引力によりサンプに引き込まれる
サブマージポンプ周辺の流れの時間変化を動画で示す.どちらも、浮力の影響の大きさが示されていると考える.
以上