概要
2022年12月5日に無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の有人地帯での補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)が解禁[1]された.その結果, 操縦者ライセンスを取得して機体認証を受けることで, 日本のほぼ全域で, 補助者なしでの自律的な目視外飛行が可能となった.
これは, 都市部でのドローンの運用が普及する可能性を示唆するものである.これに関して,国土交通省 無人航空機 飛行マニュアル(2022/12/5)[2]の定めるところによれば,風速 5 [m/s] 以上での無人航空機の飛行は禁止されている.しかし,都市部に見られる複雑な強風域を避けて飛行することは容易ではない.
理想的な条件下(無風下)でドローンが飛行する場合には最短経路が飛行経路として望ましい.しかし,ドローンの飛行は追い風や向かい風の影響を受けやすい.無風下でのドローンの飛行速度が10 [m/s]( = 36 [km/h])[3]だとすると5 [m/s] の風[4]は飛行に対して有意な影響を及ぼすだろう.ビル近傍の地面付近やビルの谷(ビルとビルの間)では局所的な強風(ビル風)が生じ,都市部ではこれらが組み合わさり複雑な強風域を形成する.そして強風域は局所的なだけでなく間欠的に発生する.定常的な風であればドローンの飛行速度を一定に保ちやすいが,局所的・間欠的な強風は避けたい.一方で,ビルの影響を避けようと上昇し高度をとると,一般的に上空では強風が吹いているため飛行に適さないことが多い.このように風況に基づいた最適な飛行経路を求めることは容易ではない.
計算流体力学研究所では,国土交通省が整備を進めるビル群と地形の3D都市モデル『PLATEAU』[5]と,気象庁が発表している風速・風向のデータ[6],日本建築学会が取りまとめた都市部での風速データ[7]を基に,都市部における局所的な強風(ビル風)を予測するシミュレーションを行っており,都市風速マップ[8]としてYouTubeに公開している.このデータを活用することでドローンが飛行可能な場所(位置と高度)を3次元地図として提供することなどが可能である.
[3] 世界シェアの約7割を占めているDJI社の人気機種「Phantom 4 Pro V2.0」の最高速度は72 [km/h]なので都市部での飛行速度としてその半分の36 [km/h]とした.
[4] 無人航空機飛行マニュアルに定められている飛行制限風速 5 [m/s]を参考にした.
[5] 国土交通省 PLATEAU
[6] 気象庁 各種データ
[7] 日本建築学会, “建築物荷重指針を活かす設計資料2 建築物の風応答・風荷重評価/CFD適用ガイド”, 丸善, (2017), pp. 59-61.
[8] 都市風速マップ