交通標識に作用する風荷重の推定   windload.pdf

目的

交通標識に適した断面形状を選定するために,標識まわりの風の流れのシミュレーションを行い,標識に作用する風荷重の推定を行った.

解析手法

流体解析の基礎方程式は非圧縮性Navier-Stokes方程式とし,離散化には有限差分法を用いる. 流体と個体の境界はImmersed boundary method (IBM)で取り扱う. スカラー,ベクトル,テンソルの諸量はスタガード配置である. また,計算格子は八分木構造に基づくBlock-structured adaptive mesh refinement (SAMR)により生成され,流れ場に応じて動的に最適化される.

解析条件

交通標識の断面形状として図1の凡例に示すCase1 ~ 4を取り扱った. 今回,標識の支持部(脚部)は省略した. また,接近流として一様な速度分布を用いた. 交通標識の幅B,一様流入速度Uおよび空気の粘性係数μを用いて決定されるReynolds数はRe=ρUB/μ=10000とした.

解析結果

Flow Field
図1 断面形状と抗力係数(Cd)の関係

従来の断面形状に近いCase1では抗力係数Cd=1.14であったのに対し,厚みが増すにつれてCase2と3ではCd=1.07,Case5ではCd=0.88と抗力が低減される傾向がみられた. また,いずれのCaseにおいても抗力係数の時間変化はほとんどみられなかった. 抗力を低減するという目的に対してはCase4が適していると結論付けられる.










考察

Pressure
図2 交通標識まわりの圧力分布
左 : Case1     右 : Case4

Flow Field

図3 交通標識まわりの流れ場(Case2)
圧力係数(Cp)の等値線と可視化断面法線方向まわりの渦度のシェーディング

Flow Field

鈍頭物体の場合,物体に作用する流体力は圧力によって概ね決定される. 今回,最も差が大きかったCase1とCase4の断面まわりの圧力分布を図2に示す. Case1では風上面全体が高圧である一方でCase4では風上面にも低圧がみられる. このことから,厚みが増すにつれて抗力が低減された要因は,風上面の高圧領域が縮小されたためだと考えられる. 両端の影響が無視できるほど長い角柱ならびに円柱,加えて球の抗力係数はそれぞれCd=2.05,Cd=1.17 ,Cd=0.47程度である[1]. これに対し,標識の形状は楕円柱を二つ交差させたものと考えられる. 今回得られた抗力は,角柱と円柱の中間の値に対して有限長さ(3次元性)による抗力低減を考慮すると妥当な結果であると言える.

図3に示すように,標識の後流域では複雑な流れ(乱流)が発達している. 標識を剥離した流れに沿って強い渦度(橙色と青色のシェーディング)とそれに伴う強い低圧(青色の等値線)がみられる. 標識から少し離れた位置で渦が発達し,強い低圧が発生しているため,標識に作用する抗力に後流渦が直接的な影響を与えることは無く,ほとんど定常的な抗力をもたらす結果になったと考えられる.








参考文献

[1] S. F. Hoerner, “Practical Information on AERODYNAMIC DRAG and HYDRODYNAMIC RESISTANCE”, S. F. Hoerner (Published by Author), (1965).