流れを見る

可視化の重要性

流れの解析ではナビエ・ストークス方程式という確立した方程式があるので,その方程式をとにかく数値的に正しく解けば,流体現象のかなりの部分が計算でわかるようになってきています.

ここで重要なのは,コンピュータの発達のおかげで計算結果はいくらでも得られますが,人間がその結果を判断し,流れの現象を理解することはそう簡単なことではないということです.膨大なデータの中から本質的な部分を見つけ出すためには流れをいかに巧く可視化するかが非常に重要になります.

可視化法と可視化のための概念

「百聞は一見に如かず」といわれるように見るということは何よりも理解を深めることができます.流れの本質を理解しようとしたらまずは流れをみるのがよいでしょう.しかしながら,水や空気は透明であり,流れを巧く見るのは難しいです.この難しい流れを見ることを「流れの可視化」と呼びます.

「流れの可視化」の基本は,流れの中に何か微粒子を投入するとその粒子が非常に小さければその流れと殆ど一体に動くということを利用して,そこに光をあてその粒子の動きを見るということが基本になります.その粒子の種類と投入の時間,場所,投入方法などでさまざまな「可視化法」が工夫されてきました.しかし,粒子の入れ方によっては流れ場そのものを変えてしまったり,粒子の動きが流体の動きとずれてしまうこともあるので細心の注意が必要になります.

また,流れによっては各点で密度が変化したりしているので,その性質を利用して粒子を使わずに「可視化」できる場合もあります.しかし,計算では流れの中の各点で速度や圧力などのすべての量がわかっているので,「可視化」は原理的には実験よりはるかに簡単です.さらに実験的に見るのが不可能,あるいは非常に難しいことも計算では難なく出来てしまいます.

計算の「可視化」もまずは実験で行われていたような「可視化」を模擬することからはじめ,難しい量の「可視化」を行い,より詳しく流れの様子を調べようとしています.ここで「可視化」のための重要な概念をいくつか説明します.

流線

2次元空間での流れの状況を説明するときに使われる「流線」は一般に時間とともに変動している流れ場のある瞬間をとって,流れ場が凍結したと考えたとき,その瞬間の速度で「1つの粒子が動いた軌跡」のことをいいます.正確には空間の各点でのその瞬間の速度ベクトルの包絡線を「流線」といいます.したがって,流れが時間とともに変動していない定常流では実際の粒子の動きに一致しますが非定常流では粒子の軌跡と「流線」は一般に一致しません.物体の表面は「流線」のひとつです.物体表面から「流線」が分かれて出るという状況は流れが剥離していると判断できます.

渦度

数学的に渦を正確に語るには「渦度」というものを定義するのが便利です.「渦度」というのは微視的に渦を見たとき流体の局所部分がどの程度回転しているかを表現しているものであって,無限に小さな粒子を流体中に入れたとき,その粒子の回転の速さに相当します.

渦の運動はレイノルズ数の高い流れでは,その中の粒子の軌跡と一致することが知られています.物体の表面では流体の速度はゼロであるので,流体の速度は物体表面付近で摩擦力によるブレーキをかけられることになります.こうして,物体の表面のごく薄い部分で「渦度」が発生することになります.

圧力分布

面に垂直な力の成分の単位面積当たりの大きさを「圧力」といいます.「圧力」の値はマイナスになることはありません.「負圧」という言葉もありますが,それはある基準の圧力に対して相対的に低い圧力を表しています.言い換えると流れに対して「圧力」の勾配のみが影響力をもつということになります.「渦」のある部分の「圧力」は低くなります.反対に流れに対して物体の前方は相対的に「圧力」が高くなる部分ができることが多いです.